エントリー・アーカイブ
親愛なる課長の皆さん、こんにちは。
課長のスキルアップ講座を担当する飼馴嵐務(かいならし・つとむ)です。
課長のスキルアップについて論じる前に、まずは課長の役割について見直してみたい。
結論から言うと、課長の役割とは、「現場の最前線に立ち、最小限の経営資源を活用して最大限の成果をあげること」である。
私が係長のとき、上司だった課長は、典型的なモーレツ課長だった。部下を手足のようにこき使い、湯水のようにエネルギーを消耗させるのだ。
このスタイルは、昔ならよかったかもしれない。働きさえすれば業績が上がった高度経済成長時代においては、課長の役割は、管理統制が鍵だった。課長は課長としての地位を活かしたポジションパワーで一方的な指示を出し、部下を統制した。部下は、課長に依存し、黙って指示を聞いていればよかった。
人を動かすのにリーダーシップは不要です。なぜ、失敗ばかりしているリーダーなのに部下に慕われるのか?詳しくはこちら。
しかし、バブル崩壊以降、課長のスタイルが変わってきている。かつてのような頭ごなしに統制する方法では、短期的に成果は上がっても、長期的に組織が疲弊し、成果を出せなくなってきたのだ。
そこで課長の役割は、部下のモチベーションをアップさせて、部下の力を引き出すスタイルへと変わっていった。コンセンサスを得ながら部下との協調を目指す民主的なアプローチである。
北風作戦から太陽作戦へ。
これは、かつての私そのものである。
忠実、勤勉、品行方正、地道、実直、穏健無難、真面目、素直――
某大企業の人事課長だったかつての私を形容するならば、このような言葉が綿々と並ぶことだろう。私は組織にとって都合のよい人間だった。上から与えられた仕事はきちんとこなしたし、部下とも角を立てずにうまくやっていた。
しかし、最終的には課長失格の烙印を押され、組織からの離脱を余儀なくされた。
詳しい事情は追って話すとして、私に足りなかったものはなんだろうか?
――私には、固有の意志がなかったのだ。
今の課長には、組織のビジョンやミッション、自分の考え方や方向性を部下に明示していくことが求められる。課長は、部下の自主性を引き出し、自身が持つ知恵や創造性をフルに発揮しながら部下に示唆を与え、組織を自律回転へと導いていかなければならない。
目的も方向感もなく荒海に漂う無抵抗のクラゲになりたくないなら、良く聞いてほしい。
主体的な意志がなければ、課長として現場を改革することは不可能である。君たちには、ポジション・パワーではなく、ナレッジ・パワーの発揮を期待したい。